文化人ブログ

読んだ本や聞いた音楽のあれこれをつらつら書きます。

【最終回】#34 The Otals『ナナマルサンバツ』感想|オタルズは優しい

Nanamaru Sanbatsu (The Otals) review

U MUST BELIEVE IN GIRLFRIEND ジャケット

喫茶店のドアを開ける。
窓側の席に座る。
いつものようにあたたかいコーヒーと遅い昼食を頼む。
持ってきたイヤホンを耳につけて音楽アプリを開く。
再生ボタンを押した。

open.spotify.com

ベースの音が聞こえる。
かすかにギターの音が鳴る。
いつも聴いたあの音が飛び込んでくる。
声がする。
「平気?」と語りかけてくる。
やさしい声だ。

オタルズはやさしい。あたたかいと思った。
いろんな曲を聴いて、アルバムを2枚通しで聴いて、この曲に戻ってきてそう思った。
やさしいバンドだと思った。
悲しみを包むようにギターの音が鳴る。
背中を押すようにベースの音が鳴る。
2人の声が鳴る。

1曲ずつ感想を書いた。
孤独に寄り添う歌があった。
恋の喜びにあふれた歌もあった。
悩みを打ち明ける歌もあった。
どの曲を聴いても、耳になじんでいくようだった。

ミュージックビデオはどれもキュートだった。
新しいキャラクターが出てくるたびにワクワクした。
ひとつひとつのストーリーとひとりひとりのキャラクターを大切にしていて素敵なことだと思った。

これまでたくさんのオタルズの曲を見て聴いた。
『ナナマルサンバツ』はオタルズのやさしさが一番あふれていると思った。
これまでのどの曲よりもあたたかでまっすぐでやさしい感じがした。
そう思った。

オタルズの出す曲、アートワーク、活動の根っこに共通してやさしさがあると思う。
聴く人によりそって、突き放したりしない。
周りの人を巻き込んで、ワクワクする活動をしていた。
ジャンルの垣根を簡単に飛び越えてどこまでも飛び回っていると思った。
あらゆる垣根を飛び越えながら、一方で自分たちの色をちゃんと守る強さも併せ持っていた。

オタルズはやさしいと思った。そう思った。
やさしい心を持ったあなたたちに出会えた。
本当に良かった。
そう思った。
ありがとう。これまでも。これからも。

youtu.be

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#33 The Otals『オフィーリアにもう一度』感想│夏の終わりは、誰にも訪れる

All Imperfect Summerland ジャケット

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『オフィーリアにもう一度』の感想を書きます。
この曲の持つ普遍性とスケールの大きさに、めまいを感じています。

夏が終わること、子供から大人になること、愛する人から離れること、その全てをひっくるめて『オフィーリアにもう一度』というひとつの曲になっています。
一曲にここまで多くの「終わり」を抱え込めることが、恐ろしいとさえ感じます。

あるいは、17曲入りの巨大なアルバムを締めるにはこれだけ巨大なパワーが必要だったということでも、あるのかもしれません。
壁のようなギターの音もストリングスの音も、すべて「終わり」に向けられているように感じます。
後半からギターの音とストリングスの音とドラムの音がすべてひとつの塊になって押し寄せてくるようなパートがありますが、力のすべてを振り絞っているような印象があり、曲のテーマに合致しています。

わたしは、この曲に対して「学生時代からの決別」を重ね合わせて聴いていました。でも、何を重ね合わせるかは人によって違っていいと思うのです。
恋が終わることを重ねてもいいし、卒業や引っ越しを重ね合わせてもいい。
大切な人の見送りやバンドを辞めることを重ね合わせる人もいるかもしれません。

そして、「夏が終わる」というテーマは年齢や性別を超えて誰にでも等しく訪れます。
ときには、フィクションと現実の壁も超えます。 このアルバム『All Imperfect Summerland』の17曲には、本当にたくさんの人物が登場しますが、私たちと同じように彼ら彼女らにも夏の終わりは訪れるよなと気がつきました。
描かれはしないけど終わりはあるはずだ、と思ってこの曲を聴いてると、何かとてつもなく大きな物をこの曲は背負っているように感じます。

とにかく、このアルバムは『オフィーリアにもう一度』という曲でひとつの終わりを描いています。
アルバムの終わりでもあり、夏の終わりでもあり、あらゆる概念の終わりを内包している。
そういうパワーのある曲だと思います。
終わりを描かずに延々と夏を続けることもできたでしょう、でもそうしなかった。
そういうところが、このアルバム好きだなと思いました。


このブログ、オタルズ1曲感想シリーズはこれまで1stアルバム、2ndアルバムの曲の感想を1曲ずつ、およそ3ヶ月にわたって書いてきました。
次回で最後になります。
次回は『ナナマルサンバツ』です。〈7/5(日)20時投稿予定〉
ここまで読んでくれてありがとうございました。

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#32 The Otals『きみはテレプシコーラ』感想│ポンコツエスパーが頑張る曲

All Imperfect Summerland ジャケット

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The Otalsの「きみはテレプシコーラ」を紹介します。

ノリノリな曲ですね!
シーケンスの電子音と透明なギターの音が軽やかでいいですね。

「実はエスパーです でも花を枯らしました」
この歌い出しがすごくポンコツな感じが表れています。
超人的な能力を持っているけれど、失敗もしてしまうと。

サビの

目を閉じて気づく ベランダに春の匂いだ

これいいですね。 「匂いで春に気づく」ってのが独特でいい視点だなと思ってます。
サビのギターの音も明るく、春を感じます。

後半がシンガロングになっています。
手拍子をしながら「歌うテレパス テレプシコーラ」とみんなで歌います。
一緒に歌いたいなー!ってなりますね!!
後からバンドサウンドも加わって勢いが増して、この曲の一番盛り上がるところになっていますね。

『きみはテレプシコーラ』は2ndアルバム『All Imperfect Summerland』に収録されています。
この次の曲が『オフィーリアにもう一度』になっています。
アルバムの終わりの一歩手前にこの明るい曲があるので、アルバム全体が明るい印象になっていると感じました。
もう一度ループして聴こう!って気持ちになるんですよね。
そういう意味でもいい曲だと思いました。

オタルズ1曲感想シリーズは1stアルバム、2ndアルバムの曲の感想を書いています。
あと2曲です。
ぜひ最後までお付き合いください。

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#31 The Otals『こっち向いてひまわり』感想│ひまわりの思い出を思い起こした曲

All Imperfect Summerland ジャケット

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ストリングスのアレンジがよく効いていますね。 『こっち向いてひまわり』のメインボーカルはマリーナですね。
ファックスがコーラスに入っています。
メインボーカルがマリーナでファックスがコーラスというのは、めずらしい気がします。
この曲のマリーナの声はいいですね。
ストリングスやギターの響きとも抜群に合います。

私は長野県で育ちました。海のない県です。オタルズの海の曲、たくさん聴いてきましたが、ここで白状します。私は海に対する解像度がとても低いです。

「遊泳禁止の旗が見えてにじんだプリズムの膜のよう」

この歌詞の解釈が結局最後までできませんでした。海で泳いだことがほとんどなくて…。
こればっかりは、すみません。

いっぽうでひまわりに対する思い入れはあります。
家の近くが雑木林になっていて、ヒマワリの種を木皿に乗せて庭先においておくと、そこから野鳥がやってくるんです。
ゴジュウカラとか、イカルとか。
そういう鳥たちを見て、野鳥図鑑を読んで、そんな幼少期を過ごしました。

この曲を聴いて、そんな幼い頃のひまわりの種のことを思いだしました。

オタルズ1曲感想シリーズは1stアルバム、2ndアルバムの曲の感想を書く予定です。 あと3曲です。 さいごまでおつきあいください。

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#30 The Otals『SNS:あるいは東京の歌ばっかりだ』感想│東京に来てもう一度聴き直してみた

All Imperfect Summerland ジャケット

『SNS:あるいは東京の歌ばっかりだ』の感想を書きます。
そういうタイトルの曲なんです。
私が「東京の歌ばかりだ」って思っているわけではないです。

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「名曲はいつだって『東京』で」と歌い出しますね。東京の歌しかない、と言います。
そんな東京のどまんなかに怪獣が現れて、SNSで話題持ちきりになってしまいます。一方で私はガラスの街で置き去りのままと歌っています。 疎外感がありますね。

2番で怪獣の正体は東京そのものだったと明かされます。東京が全部食べてしまう。あなたも友達もみんな食べられてしまった、とかなり直接的に歌います。
北へ向かう怪獣もとい東京を、小樽で迎え撃とうとします。「どうして私は動けないんだろうか」のひと言がどうしようもなく刺さりますね。
最後に「君の街のことを私が歌うよ」と言って締めくくります。この曲に出てくる語り手は優しい人ですね。

実はこの『SNS:あるいは東京の歌ばっかりだ』の感想ですが、3ヶ月前に新潟で一度書いたものがあったのですが、ボツにして全部書き直しました。東京に出てきたら何か感じ方が変わるのかな?と思って筆を取りました。
正直、聴き方が変わったかと聞かれると「わからない」と答えるほかありません。休みの日はカフェと本屋を行ったり来たりして、でもそれって新潟にいたときとほとんど変わらないよなあと思ったり。 電車で東京の街中に出てきたり、あちこち観光したりもしました。オタルズの歌詞に出てくる「練馬」や「高円寺」をまわったりも。

来月にはまた新潟に帰ります。 短いあいだでしたが「東京」をあと少しだけ見て回ろうと思います。

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#29 The Otals『空想するタルトタタン』感想│「おとぼけイントロ」が最高な新曲

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2026年6月19日公開

新曲です!

ジャケットには先月公開された『さよならマクガフィン』と同じ女の子が描かれていますね。
この少女は何者でしょうか?

最初に聴いた感想ですが、イントロのギターの脱力した感じ、カッコつけきれない感じが個人的な好みにハマっていて、大好きです。
軽快なドラムの音とタンバリンの音が合わさって、肩の力を抜いて聴いてくれよと言われているような気がしますね。
「おとぼけイントロ」と勝手に呼んでいます。

ボーカルのマリーナの歌い方が特徴的ですね! スピーカーを挟んだように若干歪ませていますね。
投げやりな歌詞とバッチリはまっています。

ギターもしっかり歪んでいます。
終始楽しそうなんですよね、雰囲気が。

ところでこの曲のCパート(ファックスがメチャメチャに歌っているパート)のワウワウ言っている感じ、最高ですね!
「おとぎ話みたいー」と言って締めるところまでカッコいいですね。

歌詞は「優等生」と呼ばれている女の子が、男の子と一緒に海へ行くという流れ、ですね。
「あーもう限界だ ラーメン食べよ存分に 校則違反も上等だ」の投げやりな歌詞がとてもいいですね!

2番ではおそらく遊園地の、コーヒーカップで遊んでいますね。
「涼しい顔をしたまま ハンドルを切って振り回した」から夢中さが伺えます。

3回目のサビの「『役に立たない言葉はいらない』 それが本当なら寂しいよね」で急にハッとさせられますね。
普段から効率化やタイパ(タイムパフォーマンス)と声高に叫ばれる世の中で、役に立つことだけ求められると、自分の逃げ場がどんどんなくなっていく感覚があると思います。
ときには役に立たない言葉が必要だと思うのです。
作家の古川日出男さんが「私たちには、ときに非常出口が必要だ」と、短編集『非常出口の音楽』の中で書いていましたが、どこか通ずるものがあるように感じますね。 www.kawade.co.jp

そして、『空想するタルトタタン』『さよならマクガフィン』を収録したEP『Hallucination Club』の発売が決定しましたね。

こちらも今から非常に楽しみです。

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6月に読んだ本 - 茜唄 / 君のクイズ / 栞と嘘の季節 ほか

こんばんは

6月は涼しかったですね。
最近、高円寺に行きました。雨でしたが素敵な雰囲気の古本屋と、静かな雰囲気のブックカフェを見つけてとても良かったです。
北千住のカフェも静かでじっくり本が読めました。

①茜唄(上・下) - 今村翔吾 www.kadokawaharuki.co.jp www.kadokawaharuki.co.jp 『祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり』
平家物語を平知盛の視点から描いた長編小説です。私はもう長いことずっと平家物語のファンをやっておりますので、どうしてものめり込んで読んでしまいますね。下巻の一ノ谷の合戦で、もう目頭が熱くなって読むのが大変でした。

②君のクイズ - 小川哲 publications.asahi.com 映画化して話題になりました。映画は見ていません。
クイズ番組の決勝、なぜ1文字も問題を聞かずに正解できたのか。
回答の『ママ.クリーニング小野寺よ』は新潟にもあります。ていうか家の近所にあります。
短くて2日で読みました。たまにはいいよね。

③栞と嘘の季節 - 米澤穂信 www.shueisha.co.jp 現時点で2章まで読みました。学校図書館の返却本の中にトリカブトの花の栞を見つける、ミステリー小説です。
米澤穂信さんの本は『黒牢城』を読んだとき以来ですね。
登場する人物がみんな怪しく見えてしまう。
心理描写がいいですね〜。あんまり上手く説明できないけど。

④アビシニアン - 古川日出男 www.gentosha.co.jp 図書館で読みました。初期の中編小説。
中学校を卒業した少女は、かつての飼い猫だった野良のアビシニアンと再会し公園で共同生活を送る。
人目を避けて、残飯を盗み、雨をしのぎ、果てには言語を失なってしまう。

⑤非常出口の音楽 - 古川日出男 www.kawade.co.jp こちらも図書館で、再読。わりと最近の短編集。お気に入りは、日本中のスーパーから卵だけを盗む少女盗賊団の話。
結末まで含めて、なんだかキツネにつままれたような気分になります。
初めて読むならおすすめ。